離職率の高い会社の特徴や原因、改善につながる対策とは

お役立ち記事 2020.06.11
離職率の高い会社の特徴や原因、改善につながる対策


企業における一定期間の従業員の退職者数を割合で表す「離職率」。「自社の離職率はどの程度なのか」「どうすれば離職率を下げることができるのか」などを知りたい経営者や人事担当者もいるのではないでしょうか。

今回は、離職の原因や離職率が高い企業と低いの特徴、離職率を改善する方法について紹介します。

離職率とは

離職率とは、その年の退職者数など、「ある時点の在籍人数に対して、一定期間後に退職した人の割合」を示すものです。働きやすさのを表す指標の1つとして使われています。離職率を算出する期間や対象はその目的によって異なりますが、入社後1年間または3年間で算出するのが一般的です。

 

離職率の定義

厚生労働省では、離職率を「常用労働者数に対する離職者の割合」と定義しています。常用労働者とは、1ヵ月以上の期間を決めて雇われている人のことです。「離職者」には、「退職」「解雇」「出向・出向復帰者」の人が当てはまりますが、同一企業内での転出入は離職者に含まれません。

離職率の計算方法

一般的な離職率の計算方法は、以下の通りです。

離職率の計算方法

なお、この計算では期間内の入退職者は含めずに計算します。

例を挙げて見てみましょう。

・2019年1月1日時点での従業員は100人
・2019年4月に7名新たに雇用したが、そのうち3名が12月31日までに退職した
・2019年1月1日から12月31日までの間に離職した人は計9名

この企業での「年初の従業員数」は100名です。2019年の4月に入社した7名(うち退職者3名)は、その年の離職率の算出には含まれないため、計算の対象となる退職者は6名となります。
上記の計算式に当てはめてみると、以下のようになります。

6(人)÷100(人)×100(%)=6(%)

よって、企業Aの離職率は、6%となります。
 

産業別の離職率

業種によって労働環境や業務の内容が異なるため、離職率も異なるようです。厚生労働省が平成30年に実施した「雇用動向調査」の結果から、産業別の離職率を見てみましょう。

産業別の入職率と離職率(平成30年)
(参考:厚生労働省「平成30年雇用動向調査結果の概況 P11『図3 産業別入職率・離職率 』」より一部改変)

上記のグラフから、「宿泊業・飲食サービス業(29.3%)」、「生活関連サービス業、娯楽業(28.1%)」、「その他サービス業(21.4%)」において、離職率が高い傾向にあることがわかります。いずれの業種も「離職率」だけでなく「入職率」も同様に高いため、人材の流動性が高い業種であると言えるでしょう。共通点として、「労働時間が不規則なこと」や「立ち仕事で体力が必要なこと」、「常に『人』と関わること」などの傾向があげられます。
 

離職の原因

どのようなことが原因で、従業員は離職を決意するのでしょうか。同じく厚生労働省が実施した「平成30年雇用動向調査」の結果をもとに、20歳~39歳の離職理由を紹介します。
 

男性の場合

まずは男性の離職の原因について見てみましょう。

男性の離職原因
(参考:厚生労働省「平成30年雇用動向調査結果の概況 P15『表5 転職入職者が前職を辞めた理由別割合』」より一部改変)

どの年代も「給料等収入が少なかった」「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」という項目に多くの回答が集まりました。そのため、「給与」と「労働条件」の2つが、離職の主な原因となっていることがわかります。また、25歳以降の男性は「会社の将来が不安だった」と感じたことが離職の原因となっており、結婚や出世など自分の今後の将来を照らし合わせて離職を考えた人もいるようです。
 

女性の場合

続いて、女性の離職の原因について見ていきましょう。

女性の離職原因
(参考:厚生労働省「平成30年雇用動向調査結果の概況 P15『表5 転職入職者が前職を辞めた理由別割合』」より一部改変」)

男性と同様に、どの年代でも「給料」や「労働条件」が主な離職原因となっています。また、20代の女性は「職場の人間関係が好ましくなかった」、30代女性は「定年・契約期間の満了」を理由に離職する人が多く、年代によって離職理由が変化する傾向にあるようです。
 

離職率の高い企業の特徴

「自社の離職率が高い」と悩んでいる人事担当者もいるかもしれません。離職率が高い傾向にある企業の特徴を紹介します。

労働環境に不満がある・会社の将来が不安

「募集や採用の時点で聞いた業務と入社後に実際行う業務が違った」という、入社後の認識の不一致は少しずつ労働環境への不満や違和感につながり、離職を考える引き金になる可能性があります。他にも、「時間外労働や深夜労働の恒常化している」「休日出勤に対して手当てが支払われない」「有給休暇が取りづらい」などといった労働環境の場合、不満が生まれやすいと言えます。

また、「会社の業績が悪化してきている」「業績悪化に伴い、給与が減少した」といったように、会社の将来が不安だと感じるときにも離職率は上昇する傾向にあります。
 

評価や待遇、制度に不満がある

「業務を正当に評価してもらえない」「成果を出しても昇進できない」といった人事評価制度に対して不満を感じる人もいるでしょう。また、「通勤補助が少ない」「副業や在宅勤務が認められていない」など他社と比較して制度や福利厚生が手薄だと感じた場合に、転職を検討する場合があります。 
さらに、「子育てや介護などとのバランスが取りにくい」「育児休業から復帰したときに仕事の裁量が減る」といったライフステージの変化に伴う不安も離職につながる可能性があると言えそうです。
 

離職率が高い企業が一概にブラック企業とは限らない

「離職率が高い企業」=「ブラック企業」とは限りません。なぜなら、近年人材の流動化が進む中で、必ずしも「不満」だけが離職の理由にならないからです。最近では、従業員のキャリアアップを応援するための、人材育成の仕組みや制度を整えている企業も増えています。
また、特定の年代に従業員の割合が集中している場合、その層が一斉に定年退職した年に、離職率が一時的に高まるケースもあります。

反対に、離職率が低ければ良いとも言い切れません。離職率が低い企業では、勤続年数が長い傾向があるため、同じ役職に留まる人がいると、若手や中堅社員が昇進するチャンスが減ってしまいます。また、組織変革や活性化が起こりにくい、業務が属人化しやすいといった課題も生じる可能性があります。そういったことを防ぐために、社内での「人材の流動化」を意識すると良いでしょう。
 

離職率が低い企業の特徴

続いて、離職率が低いと言われる企業の特徴を紹介します。

組織に対する安心感や信頼感がある

「長くいたい」と思える場合、その会社の環境や人に対する安心感や信頼感を抱いている可能性があります。残業代が支払われないなどの違反や不正がないことはもちろん、上司や同僚に相談しやすい雰囲気づくりが大切です。また、従業員が意見を言いやすい「心理的安全性」が担保されていると、モチベーションの向上にもつながるでしょう。


自分に合った仕事や働き方ができている

従業員は、採用時に聞いた業務内容や入社時に契約した内容が、「自分に合っている」「やってみたい」と感じて入社を決めていることがほとんどです。入社前と入社後の認識が一致していると、自分に合った業務が行えるため、不満を抱きにくいと言えるでしょう。また、「フレックスタイム制で自身の働き方をコントロールしやすい」「育児休業を取りやすい」など仕事と生活が両立しやすいことは離職防止にもつながるでしょう。
 
従業員は、採用時に聞いた業務内容や入社時に契約した内容が、「自分に合っている」「やってみたい」と感じて入社を決めていることがほとんどです。入社前と入社後の認識が一致していると、自分に合った業務が行えるため、不満を抱きにくいと言えるでしょう。また、「フレックスタイム制で自身の働き方をコントロールしやすい」「育児休業を取りやすい」など仕事と生活が両立しやすいことは離職防止にもつながるでしょう。
 

従業員のことを考えた待遇や制度がある

従業員のことを理解した「人重視」の待遇や制度があると、エンゲージメントの向上につながり、離職防止にもなるでしょう。経営者やリーダー層は、「現在、どのような働き方を希望している従業員が多いのか」「どのような制度を取り入れれば、従業員が望む働き方を実現することができるのか」などを常に考える必要があります。
 

離職率を改善する方法

離職につながり得る原因や特徴を踏まえ、企業では離職率の高さを改善するためにどのような取り組みをしていくといいのでしょうか。5つの観点から紹介します。

コミュニケーションの活性化

仕事内容が好きでも人間関係に問題があっては、業務に影響が出てしまうこともあります。一人で悩みを抱えないためにも、悩んだ時に「すぐに相談ができる相手」が必要となるでしょう。そのために「メンター制度」や「ブラザーシスター制度」となど、新入社員や若手社員をサポートできる制度を取り入れることで、悩みや迷いを相談しやすい環境ができ、離職防止につながります。
また、先述した1on1ミーテイングといった上司と部下の関係だけでなく、従業員同士のコミュニケーションが図れるよう、チームでのランチや飲み会(オンラインも含む)などの機会を設けることで、社内のコミュニケーションが活性化するかもしれません。


従業員のキャリアアップ

従業員一人ひとりのキャリアアップにつながる制度を取り入れることで、「社内でどのようなキャリアを目指すことができるのか」や「どのような方法で到達できるのか」などが考えるきっかけになり、離職率の改善になると言えます。
「ジョブローテーション」や「社内公募制度」、「リカレント教育制度」などを取り入れて、従業員がキャリアアップを目指せる環境づくりをすると、従業員の定着率アップにもつながるかもしれません。
 

給与・評価制度の見直し

「収入が少ない」ことに不満を感じて離職する人が多いことを踏まえ、現状の給与や評価制度が適切か、市場に見合っているかを見直してみましょう。定期的なアンケートやヒアリングにより従業員の声を取り入れることで、安心感にもつながります。
人事評価制度には、「ノーレイティング」や「コンピテンシー評価」の他にも、OKRなどの「目標管理制度」、ピアボーナスなどの「360度評価」と、さまざまな種類があります。自社の方針や従業員に合ったものを検討し、新しい評価制度を取り入れる際は、制度について従業員に理解してもらえるようアナウンスをしましょう。
 

働き方の選択肢を増やす

「9時から17時までオフィスに出勤」と勤務が決められた企業もあるでしょう。しかし、女性の社会進出や少子高齢化などの社会的背景から、従業員の出産・育児・介護などのライフステージに見合った働き方を提案していく必要性が高まっています。
「テレワーク」や「短時間勤務制度」の他にも、「フレックスタイム制」「ワーケーション」などの制度の導入や、企業内に託児所を設けるなど、従業員の層にマッチする働き方を提示していくことで、従業員にとって「働きやすい職場」となり、離職率の低下につながるでしょう。
 

採用プロセスの見直し

入社後のミスマッチも、離職理由の1つとされています。そのため、人材の採用をする際は、企業側が「自社の求める人物像」「業務内容」「条件」「待遇」など全ての説明を行い、双方の認識を統一するよう努めましょう。的確に伝えるために、手段や伝え方を採用担当者のスキルを強化しておことも大切です。
また、内定者に対して「電話やメールでの個別対応」や「内定者同士のSNSページを設立」などの入社前フォローをすることで安心して入社できるため、入社後の早期離職防止にもつながります。
 

離職の原因を探り、働きやすさを考えよう

離職率とは、企業でどれくらいの従業員が辞めているのかの割合を示した、働きやすさを表す指標の1つです。

まずは自社の離職率の実態を把握し、できる限りの改善を進めましょう。とはいえ、人材の流動性が高まっているいま、必ずしも離職が悪いことではありません。退職者と良好な関係性を維持するための「アルムナイ」や「出戻り制度」などを視野に入れてみてもいいかもしれません。

従業員の声を聞き、従業員と良好な関係性を築くための制度を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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