ストレングスファインダーの活用方法!企業による活用事例付き

社員一人ひとりの「強み」の元を知ることができる「ストレングスファインダー」。診断結果は全4分類・34資質あり、「得意とすること」は資質によって異なります。転職を考える際、ストレングスファインダーの結果を元に自己分析をする人もいるようです。
企業において、社員それぞれが「自分の資質」や「一緒に働くメンバーの資質」を知ることは、チームワークや生産性の向上につながるとされています。今回は、ストレングスファインダーの概要や活用方法を、実際に活用している企業の事例を交えながら紹介します。
ストレングスファインダーとは
ストレングスファインダーとは、一人ひとりの「強み」「才能」を発見するための診断ツールです。米ギャラップ社が40年間実施してきた「人間の強み」に関する研究結果をもとに開発されています。
近年、少子高齢化による労働人口の減少が深刻な社会問題となっています。また、AIやIoTなどの浸透により、これまでのビジネスモデルが通用しなくなってきました。そうした状況を打開するため、多くの企業が「生産性の向上」を模索しています。
「チームワーク」を良くし、メンバー同士が互いの「強み」を高め合い、「弱み」を補い合える状態にすることも、生産性を向上させる方法の1つとされています。そのため、自分自身や共に働くメンバーの「資質」を知り、業務に活用することができるストレングスファインダーに注目が集まっているのです。
ストレングスファインダーの4分類・34資質
ストレングスファインダーの診断結果は、全4分類・34資質に分けられます。それぞれの資質について、簡単に紹介します。
分類①:実行力資質
実行力資質とは、「どうすれば物事を成し遂げられるのか」を知っていて、行動を起こせる資質のこと。この資質を持っている人は、何かを「実行する」「完遂する」ことに長けています。実行力資質には、9つの資質があります。
実行力資質に含まれる9つの資質
名称 | 特徴 |
アレンジ | ●「何をどう組み合わせたら、最大のパフォーマンスを発揮することができるのか」を考えることができる ●多くの物事を「組織化」する能力と、それを補完する「柔軟性」を併せ持つ |
回復志向 | ●「問題を解決する」ことができる ●「問題点」を探し出し、それを「解決」することに長けている |
規律性 | ●日課や身のまわりを、「規則正しく秩序立てる」ことを好む ●さまざまな出来事は、「自分の考えた秩序で説明できる」と考えている |
公平性 | ●「明確なルール」のもと、全ての人を公平に扱うことができる ●「あらゆる人を平等に扱う必要性がある」という確信がある |
慎重さ | ●何かを決定・選択する際に、細心の注意を払う ●どのようなプロセスにおいても、リスクが発生する可能性があると考えている |
信念 | ●揺るぐことがない、「普遍的な価値観」を持っている ●「普遍的な価値観」が人生に大きく影響している |
責任感 | ●「やる」と一度決めたことに対して、責任を持つ ●「正直さ」や「忠実さ」などを大切にする |
達成欲 | ●スタミナがあり、精力的に仕事に取り組むことができる ●自分自身が「多忙」かつ「生産的」であることを好む |
目標志向 | ●自分で決めた目標に向かって突き進みつつ、目標達成に必要な軌道修正も行える ●優先順位を明確にした上で、行動に移す |
分類②:影響力資質
影響力資質とは、周囲のメンバーを巻き込み、チームの考えを広く外に広げていく資質のこと。この資質を持っている人は、他のメンバーに「影響を与えること」や「動いてもらうこと」に長けています。影響力資質には、8つの資質があります。
影響力資質に含まれる8つの資質
名称 | 特徴 |
活発性 | ●「アイデア」を実行に移し、成果をあげることができる ●「アイデア」を口にするだけでなく、すぐに実行することを好む |
競争性 | ●成果が究極の評価基準であるため、無意識に他者との比較をしている ●他者との競争に勝つための努力を惜しまない |
コミュニケーション | ●自分の考えを、言葉で表現することができる ●話術に優れており、相手の印象に残るように物事を説明することに長けている |
最上志向 | ●個々人やチームの「卓越性」を高めるため、一人ひとりの「強み」に着目する ●「良いもの」を「最高レベルのもの」に変えることを追求する |
自我 | ●独立心に富んでおり、周囲に与える影響の大きさを基準に、プロジェクトに優先順位をつけることができる ●周囲や社会全体に対して、大きな影響を与えることを望んでいる |
自己確信 | ●自分の「能力」や「判断力」に自信があり、時としてリスクを冒しながらもプロジェクトを進める ●「正しい方向に進んでいるか」を自分自身で判断することができる |
社交性 | ●初対面の人を惹きつけ、相手との信頼関係を築くことができる ●初対面の人と打ち解け、親しくなることを好む |
指令性 | ●「存在感」があり、リスクを負うことを恐れない ●主導権を握り、決断を下すことができる |
分類③:人間関係構築力資質
人間関係構築力資質とは、強固な人間関係を構築する能力を活かし、他のメンバーと共に大きな力を発揮するチームを作れる資質のこと。この資質を持っている人は、「人とつながること」や「良い関係性を築くこと」に長けています。人間関係構築力資質には、9つの資質があります。
人間関係構築力資質に含まれる9つの資質
名称 | 特徴 |
運命思考 | ●あらゆる「人」や「物事」に関連性があると考えている ●世の中に「偶然」はほとんどなく、あらゆる出来事に何らかの意味があると信じている |
共感性 | ●相手の状況を自分事に置き換えて考え、相手の感情を察することができる ●相手がうまく言葉で表現できないことを、適切な言葉に言い換え、周囲に伝えることができる |
個別化 | ●一人ひとりの「ユニークな個性」に興味をもち、理解することができる ●タイプの異なるメンバーをまとめ、生産性の高いチームを作ることに長けている |
親密性 | ●周囲と緊密な関係を築くことができる ●目標達成のためには、親しい人達と努力したいと考えている |
成長促進 | ●一人ひとりに「可能性」を見出し、それを伸ばしていくことができる ●いかなる「進歩の兆候」も見逃さず、成長が見えたことに喜びを感じる |
調和性 | ●いかなる場面でも、意見の一致を追求する ●平和を好み意見の衝突を嫌うため、異なる意見の中にも共通点がないかを模索する |
適応性 | ●物事を柔軟に考え、その時々の流れに沿うことを好む ●「今」を大切にし、現時点で用意されている選択肢からこれから進むべき方向を考え、将来を見極める |
包含 | ●相手を受け入れることができる ●輪から外れている人に気付き、輪の中に入れようと努力する |
ポジティブ | ●「情熱的」で、自分の熱意を周囲に自然と分け与えることができる ●生き生きとしていて、周囲に「活気」「やる気」をもたらすことに長けている |
分類④:戦略的思考力資質
戦略的思考力資質とは、あらゆる可能性に目を向けながら情報を収集・分析し、適切な判断を下せる思考力のある資質のこと。この資質を持っている人は、「物事を考える」「頭を活発に動かす」ことに長けています。戦略的思考力資質には、8つの資質があります。
戦略的思考力資質に含まれる8つの資質
名称 | 特徴 |
学習欲 | ●「学習意欲」が高く、常に「向上」したいと考えている ●学習の結果よりも、学習すること自体に意義を見出す |
原点思考 | ●「過去」について考えることを好む ●歴史・原点をたどることで、現在を理解しようとする |
収集心 | ●好奇心が旺盛で、さまざまなことを知りたいと考えている ●「情報」「アイデア」「アイテム」など、特定のものを集めることを好む |
戦略性 | ●「目的達成に向けたシナリオ」を想像することに長けている ●いかなる想定に対しても、最適な道筋をただちに見つけることができる |
着想 | ●「新しいアイデア」を考えることを好む ●一見すると共通点のない事柄の中に、関連性を見出すことができる |
内省 | ●自らとじっくり向き合って考えることが好きで、「知的な活動」に多くの時間を費やす ●「知的な議論」を好む |
分析思考 | ●物事の「理由」と「原因」を客観的に判断する ●目の前の状況や仮説などに影響を与える可能性のあるものをすべて考慮した上で、判断することができる |
未来志向 | ●「未来」や「未来になったらできること」をポジティブに捉えている ●未来についてのビジョンを語ることにより、周囲の視野を広げ、人々を鼓舞することができる |
企業での活用方法
企業において、ストレングスファインダーはどのように活用することができるのでしょうか?活用につなげるための6つのステップと、具体的な活用方法を紹介します。
活用につなげるための6つのステップ
米ギャラップ社の元社員マーカス・バッキンガム氏は、著書『最高の成果を生み出す6つのステップ』の中で、一人ひとりの「資質」や「強み」を実際の業務に活かすためには以下の6つのステップが必要だと伝えています。

ステップ①:「弱み」の克服よりも「強み」の駆使の方が成果を生むという発想に切り替える
一人ひとりが「強み」を高めることの重要性を認識することにより、仕事での成果が最大化します。しかし、中には「強みを駆使することよりも、弱みを克服することの方が大切だ」と考えている社員もいるかもしれません。
そのため、まずは一人ひとりの発想を「弱みの克服よりも、強みを駆使することの方が大切だ」という発想に切り替えることが重要です。「なぜ」ストレングスファインダーを導入し、それを「どのように」社内で活かしていきたいかを事前に十分説明すると良いでしょう。
ステップ②:一人ひとりの「強み」とそれが活かされる場面を明確にする
「強み」を駆使することの必要性に気付いても、自分にはどのような「強み」があるのかが分からないと、成果を上げづらいでしょう。そこで、ストレングスファインダーを受け、一人ひとりの「強み」を明確にします。「強み」が明確になったら、日々の生活を振り返り、「どのような場面で強みが活かされているか」を明らかにしましょう。
ステップ③:チーム・組織内で「強み」を活かす方法を考える
「強みを活かす機会が十分に与えられていない」といった理由から、自分の「強み」を仕事で活かしきれていないと感じている社員も少なくないでしょう。仕事の成果を最大化するためには、一人ひとりの「強み」をチーム・組織内で活かすことが必要です。チーム・組織内で「強み」を活かす方法を考え、それを実行に移しましょう。
ステップ④:「弱み」を遠ざける方法を考える
いくら「強み」を駆使することの重要性を認識していても、ふとした場面で「弱みを克服しなくて本当に良いのだろうか」と疑心暗鬼になる可能性があります。そうした不安な気持ちを無くすためには、ステップ③と反対の発想が必要です。チーム・組織内で一人ひとりの「弱み」を遠ざける方法を考え、それを実行に移しましょう。
ステップ⑤:自分の「強み」「弱み」を周囲に伝える
多くの企業では、ほとんどの仕事をチーム単位で進めていることでしょう。そのため、「強み」を最大限発揮するためには、上司との1on1の際やチーム内での役割分担を決める際などに、自分の「強み」「弱み」を周囲に伝えることも重要です。
とは言え、伝え方によっては、「誰もがやりたい仕事」のみを希望し「誰もがやりたくない仕事」は避けようとしているように周囲が感じてしまう可能性があります。「強み」を伝える際には自慢をしない、「弱み」を伝える際には愚痴をもらさないといった意識を一人ひとりが持つことが重要でしょう。
ステップ⑥:「強み」を発揮することを習慣化する
仕事を続けていると、「別の部署に異動する」「上司が別の人になる」「新人の教育担当をすることになる」といった変化に直面することもあるでしょう。そうした変化にばかり向き合っていると、自分の「強み」を十分に発揮できなくなる可能性があります。どのような状況になっても「強み」を活かし「弱み」を遠ざけることができるよう、仕事への関わり方を定期的に振り返り、「強み」を発揮することを習慣化しましょう。
ストレングスファインダーの具体的な活用方法
先ほど紹介した6つのステップを実行するための方法として行われることが多いのが、少人数を1つのグループとした研修・ワークショップです。
例として、同じチームのメンバー同士で行う「チームビルディング研修」、部下をもつ社員向けの「マネージャー研修」、中堅社員を対象とした「キャリアマネジメント研修」、将来の幹部候補を対象とした「次世代リーダー研修」などが挙げられます。
ストレングスファインダーの診断結果をもとに研修を行い、互いの違いを受け止めることができれば、心理的安全性につながります。すると、メンバー一人ひとりがチーム・組織内で強みを発揮しやすくなり、結果的に生産性の向上やイノベーションの創出につながっていくでしょう。
ストレングスファインダーの企業での活用事例
実際に、ストレングスファインダーを活用している企業の事例を紹介します。
株式会社はたらクリエイト ~ストレングスファインダーの結果をもとに作成した「取扱説明書」を社内で共有~
長野県上田市で「リモートチームサービス」を展開している株式会社はたらクリエイトでは、スタッフ全員が新人研修でストレングスファインダーを診断し、その結果をもとに「取扱説明書」を作成しています。
「取扱説明書」に記載するのは、「上位5資質」のほか、「何に喜びを感じるか」「どのようなときに力を発揮することができるのか」といった自分自身の特性です。「取扱説明書」を作成する際は、自分や他者の資質に対する理解を深めるため、過去の経験・成功体験などを資質と紐づけて掘り起こすインタビューワークショップを行っています。
また作成した「取扱説明書」はオフィスに掲示しているため、誰でも見ることができます。チーム内の役割分担を考えたり、人材育成の計画を練ったりする際に「取扱説明書」を活用することにより、一人ひとりが強みを発揮しながら仕事することにつながっています。
弊社、はたらクリエイトでの取り組みの詳細は、こちらの記事をご覧ください。

ハンズラボ株式会社 ~認定コーチを招き、ワークショップを実施~
ITソリューション事業を手掛けているハンズラボ株式会社では、ストレングスファインダーの認定コーチを招いて、ワークショップを実施しています。
診断結果をもとにチームを分け、「34資質の傾向」について理解を深めたら、自身の強みについて語りながらランチを一緒にとります。その後グループディスカッションを行い、「自分取扱説明シート」を作成。「自分取扱説明シート」には、「仕事で資質を活かせるシーン」や「やる気が上がるシーン・言葉」「周囲にリクエストしたいこと」などを記載します。
ワークショップを行うことで社員の自主性が発揮され、チームビルディングにも一役買っていると好評です。「上位5資質」を書いたカードを自主的にデスクに置いている社員もいて、ストレングスファインダーの活用に向けた動きが進んでいるようです。
ストレングスファインダーを活用し、チームワークや生産性の向上につなげよう
「物事をどのように考えるのか」「どのようなことを得意とするのか」は、一人ひとりの持つ資質によって異なります。ストレングスファインダーで自身の「資質」を知ることで、チーム・組織内でメンバー同士が互いの「強み」を高め、「弱み」を補い合うことができます。
ストレングスファインダーを社内で活用するためには、6つのステップを意識した上で、ワークショップを実施すると良いでしょう。また、人材配置や役割分担などを決める際にも、ストレングスファインダーを活用することができます。ストレングスファインダーを活用することで、チームワークや生産性の向上につなげてみてはいかがでしょうか。