プロジェクトマネジメントとは?基本的な手法や必要なスキル

お役立ち記事 2020.08.18
プロジェクトマネジメントとは


プロジェクトの目標達成に向け、プロジェクトを管理していく「プロジェクトマネジメント」。プロジェクトを成功に導くために重要なものですが、「マネジメントを行うのは初めてで、不安を感じる」「具体的に何をすれば良いのか分からない」といったプロジェクトマネージャーの方もいるでしょう。
 
今回は、プロジェクトマネジメントの基本や手法、必要とされるスキル、スキルを向上させる手法などについて紹介します。

プロジェクトマネジメントの基本的な考え方

新しいプロジェクトを立ち上げたり、既存のプロジェクトを改善したりする際に必要となる、プロジェクトマネジメント。プロジェクトの成功には不可欠なものですが、具体的にどのようなことを行えば良いのでしょうか。プロジェクトマネジメントの定義や必要な理由など、プロジェクトマネジメントの基本について、紹介します。
 

プロジェクトとは

プロジェクトマネジメントについて理解するためには、まず「プロジェクト」とは何かを明確にしておく必要があります。プロジェクトとは、目標を達成するための期間が決められている業務のこと。例として、新商品・サービスの企画開発、ソフトウェア開発、建設工事などが挙げられます。プロジェクトには、始まりと終わりが定義されている「有期性」と、未経験の要素が含まれている「独自性」という2つの特徴があります。そのため、全く同じ業務を継続的に繰り返して行う「ルーティンワーク」とは明確に区別されます
 
近年、企業を取り巻く環境の変化に伴い、「これまでと全く同じ方法では、成功しない」「未確定の要素が多い」といったように、「独自性」を持つ業務が増えてきています。そのため現在では、一部のルーティンワークを除いた、業務の大半がプロジェクトであると考えられます。
 

プロジェクトマネジメントとは

「プロジェクトマネジメント」とは、文字通り、プロジェクトを管理していくことを意味します。「プロジェクトを成功に導くための計画立案と管理」「プロジェクトのQCD(品質・コスト・納期)を守るための管理」と言い換えることもできるでしょう。
 
プロジェクトマネジメントの目的は、プロジェクトの目標達成です。プロジェクトの目標達成のため、計画を立て、プロジェクトを進める際に必要となる「手順」「人材」「設備」「予算」などを総合的に管理します。
 

プロジェクトマネジメントが必要な理由

プロジェクトには「有期性」「独自性」という特徴があるため、何も管理を行わないと「納期までに業務が終わるか分からない」「どう進んでいくのか、見通しが立たない」といった問題が起こる可能性があります。そのため、プロジェクトは管理なしでは失敗してしまうものと言えるでしょう。
 
プロジェクトマネジメントは、プロジェクトを失敗させない、成功に導くために不可欠なものとされています。計画を立て、「いつまでに」「どのような」業務を遂行する必要があるのかを示すことで、メンバー一人ひとりの役割や仕事の優先順位を明確にすることができます。そのため、プロジェクトマネジメントをすることで、業務をより効率的に行うことが可能になります。

また、予算管理の面でも、プロジェクトマネジメントは重要です。プロジェクトの完了後に「経費がいくらかかったか」「利益はいくらになったか」を計算していては、プロジェクトが赤字化してしまう可能性があります。また、「何にどのくらいの費用をかけているのか」が分からないと、プロジェクトの利益を最大化することもあるでしょう。プロジェクトの赤字化を防ぎ、利益を最大化するためには、プロジェクトの開始から終了まで、一貫した管理を行うことが重要です。

プロジェクトマネジャーの基本業務

プロジェクトの管理者が不在では、プロジェクトの管理ができなかったり、プロジェクトが失敗してしまったりする可能性もあるでしょう。プロジェクトマネジメントを実際に担当するのが、「プロジェクトマネージャー」の役目です。プロジェクトマネージャーは、「プロジェクトを成功に導く」という重要な役割を担っています。
 
プロジェクトマネージャーの基本業務は、課題の洗い出しやタスクの決定といった「課題管理」、タスクごとにスケジュールを決める「スケジュール管理」、プロジェクトのアウトプットを保証する「成果物管理」の3つに大別されます。業務の具体例としては、「企画立案」「経費の見積り」「計画の作成」「ヒトやモノの確保」「メンバーへのタスクの割り振り」「進捗管理」などが挙げられます。
 

プロジェクトマネジメントの手法

プロジェクトマネジメントを効率的に行うためには、手法の活用も検討しましょう。ここでは、一般的なプロジェクトマネジメントの手法を紹介します。
 

カレンダー

すぐにでもプロジェクトマネジメントを始めたい方にオススメなのが、カレンダーツールの活用です。会議や研修、営業などのスケジュールを管理する目的で日常的に使われているため、導入にあたって、手間や時間がかかりません。プロジェクトマネジメントでカレンダーを活用する際は、「内部確認」「先方への納品」などいくつかの工程に分けて、期限を設定すると良いでしょう。
 

ガントチャート

ガントチャートとは、縦軸に「タスク」、横軸に「日付」を書くことで、プロジェクト全体の進捗管理を見える化した表のこと。タスクごとに予定や進捗状況を記載することができます。「タスク」と「日付」だけを記載するのではなく、「担当者」や「開始日」「終了日」といった列を追加することにより、よりプロジェクトマネジメントがしやすくなります。

ガントチャート


PERT

PERTとは、「Program Evaluation and Review Technique」の略で、プロジェクトの工程一つひとつの順番や、それぞれにかかる時間を見える化したもの。別名、「アローダイアグラム」とも呼ばれます。PERT作成時には「プロジェクトを一つひとつの工程に分解する」「工程の順序や工程ごとの時間を明確にする」などが必要です。そうすることで「必ず期限通りに行う必要があるのはどの業務か」が明確になり、プロジェクトマネジメントが行いやすくなります。

PERTの概要図


 

WBS

WBSとは、「Work Breakdown Structure」の略で、プロジェクトの作業工程を細分化した図のこと。WBSを活用することで、プロジェクトを完遂するために必要な業務を全て洗い出すことができます。WBSに「時間軸」や「担当者」を組み合わせて表にすると、先ほど紹介したガントチャートになります。なお、WBSを使うことによるメリットについては、後ほど紹介します。

WBSの概要図

 
この他にも、タスクを時系列で表示・管理する「タイムライン」や、プロジェクトに関連することを文字や写真、イラストなどでつなげていく「マインドマップ」などの手法があります。プロジェクトの期間や内容に合った手法を選ぶと良いでしょう。
 

プロジェクトマネジメントに必要なスキルと向上させる方法

プロジェクトマネジメントは、「手法を活用しただけで上手くいく」というものではありません。プロジェクトを成功させるためには、スキルも求められます。プロジェクトマネジメントに必要なのは、以下の3つのスキルです。
 

①:プロジェクト全体を俯瞰するスキル
②:先を見通すスキル
③:相手に合わせたコミュニケーションが取れるスキル

 
3つのスキルと、スキルを向上させる方法を紹介します。
 

プロジェクト全体を俯瞰するスキル

プロジェクトは通常、複数のメンバーやチームによって進められます。そのため、メンバーやチーム同士は、相互に影響し合う関係にあるとされています。「この業務は必要ないと思う」「事前に決まった方法Aとは別の、方法Bで進める」といったメンバーやチームの個々の判断・行動により、図らずもプロジェクトの進行に悪影響をもたらしてしまうこともあるでしょう。そうした状況が起きないよう、プロジェクトマネジメントで必要となるのが、プロジェクト全体を俯瞰するスキルです。
 
プロジェクト全体にとってメリットがある選択肢はどれかを考え、必要に応じて軌道修正していくことが、プロジェクトマネージャーには求められます。そのためには、プロジェクトの特性を理解しておくことも重要です。
 
本や研修などでマネジメント方法に関する知識を習得すると共に、実際に何度かプロジェクトを進めていくことにより、プロジェクト全体を俯瞰するスキルが向上するでしょう。
 

先を見通すスキル

良かれと思って行動したことが失敗につながったり、業務の抜け漏れや判断ミスをしてしまったりといったことは、誰にでも起こりえます。しかし、「つまづきやすいポイント」や「判断を間違えそうなポイント」が事前に明らかになっていれば、失敗を未然に防ぐことができるでしょう。そのため、プロジェクトマネジメントでは、先を見通すスキルも必要です。
 
プロジェクトマネージャーには、プロジェクトを進める上で「想定される課題」や「ミスやトラブルが起こる可能性」を事前に予測し、失敗を未然に防ぐようメンバーに働きかけることが求められます。プロジェクト全体を俯瞰しながら、先を見通すことができれば、メンバーからの信頼も集めやすくなります。
 
先を見通すスキルを向上させるためには、今後予想されるリスクを事前に把握した上でリスクの軽減策を考える「リスクマネジメント」や、将来起こりえる環境変化に対するシナリオをいくつか用意した上でそれぞれのシナリオへの対応策を考える「シナリオプランニング」について学ぶと良いでしょう。習得した知識を実際のプロジェクトマネジメントに活かすだけでなく、「実際にリスクが軽減できたか」「事前に想定していた通りの対応ができたか」などを検証することも重要です。
 

相手に合わせたコミュニケーションが取れるスキル

プロジェクトマネージャーは、チームメンバー、上司、クライアントなどさまざまな人とのやり取りが発生する職務でもあります。また、「立場」や「思い」「プロジェクトへの理解度」などは、接する相手によって異なります。そのため、プロジェクトマネジメントをする際には、相手に合わせたコミュニケーションが取れるスキルも必要です。
 
プロジェクトマネージャーには、相手の立場や状況を把握した上で、相手に納得してもらえるような説明をすることが求められます。プロジェクトに携わるメンバーの理解・協力が得られれば、プロジェクトをより円滑に進めやすくなります。
 
相手に合わせたコミュニケーションが取れるスキルを向上させるためには、相手も自分も尊重するコミュニケーションスキルである「アサーション」の研修を受けたり、メンバー一人ひとりが安心してかつ自由に発言・行動できる状態である「心理的安全性」を高めることを意識したりすると良いでしょう。



プロジェクトマネジメントをするにあたっての注意点・ポイント

プロジェクトマネジメントをする際には、さまざまなことに注意を払う必要があります。プロジェクトマネジメントをするにあたっての注意点とポイントについて、紹介します。
 

まずは小規模のプロジェクトから挑戦する

企業によっては、「数年単位」や「大人数」といった大規模なプロジェクトから、「数週間・数カ月単位」「少人数」といった小規模なプロジェクトまで、さまざまなプロジェクトが進行しているでしょう。プロジェクトマネジメントに初めて携わる場合、いきなり大規模のプロジェクトに携わるのはリスクが高いとされています。そのため、まずは「数週間・数カ月単位」や「少人数」の小規模なプロジェクトから挑戦しましょう。
 

成果物をイメージした上で、タスクや計画を考える

新たなプロジェクトを開始する際、「最初にタスクの洗い出しをする」「まずはスケジュールを考える」といったように、先に細かなことを決めてしまうことも少なくないでしょう。そのような進め方をしてしまうと、プロジェクトの目標・目的が不明確になったり、成果物をイメージしにくくなったりする可能性があります。そのため、まずは成果物を明確にする必要があります。先に成果物をイメージした上で、それを実現させるためのタスクや計画を考えましょう
 

「チームを育成する」という意識を持つ

チームが発足したばかりの頃は、たとえ優秀なメンバーが集まっていたとしても、チームの結束力・団結力は弱く、チームとしては未熟な状態です。すぐに成果を出そうとすると個々人の力に頼ってしまいがちですが、それではチームは育ちません。「プロジェクトはチームで進めていくもの」だということを念頭に置き、「チームを育成する」という意識を持ちましょう
 

プロジェクトの目的・目標をメンバーに共有する

プロジェクトを早く進めたいと思うあまり、メンバーに「タスクだけを伝え、プロジェクトの目標・目的は伝えない」ということもあるかもしれません。しかし、タスクを伝えただけでは、メンバーは「タスクは分かるけれど、プロジェクトの目的・目標が分からない」と困惑してしまうでしょう。目標・目的の共有ができていないと、メンバー一人ひとりが別々の方向に進んでしまい、プロジェクトの失敗につながる可能性があります。プロジェクトを成功させるため、プロジェクトを進める前には必ずプロジェクトの目的・目標をメンバーに共有しましょう。
 

メンバー一人ひとりの責任の範囲を明確にする

プロジェクトマネジメントでは、メンバーの「役割分担」のみ決め、「責任の範囲」までは決めないということも起こりがちです。一人ひとりの役割を決めただけでは、仕事に意欲的に取り組めないメンバーもいるかもしれません。全員が責任感を持って意欲的に仕事に取り組めるようにするためには、メンバー一人ひとりの責任の範囲を明確にすることが重要です。それにより、メンバーは「自分にはこの仕事を成功させる責任がある」と認識できるようになり、プロジェクトの成功につながるでしょう。
 

プロジェクトに関わる人とのコミュニケーションを大切にする

プロジェクトは、チームメンバーやクライアントなどさまざまな人の協力なしでは進みません。そのため、プロジェクトを成功させるためには、プロジェクトに関わる人とのコミュニケーションを大切にすることが重要です。チームメンバーに対しては、相手の価値観・意見を尊重した上で、スキルや意欲に合った適正な仕事を割り振り、定期的にフィードバックを行う必要があります。また、経営陣やクライアントなどに対しても、必要な支援を得られるよう、働きかけると良いでしょう。
 

問題の兆候を見逃さないようにする

「順調に進んでいたはずのプロジェクトが、ある日突然うまくいかなくなってしまった」という経験のある方もいるでしょう。一見、何の問題もなく進んでいるように思えても、実はさまざまな問題が潜んでいるということは少なくなりません。プロジェクトマネジメントをする際は、メンバーの様子や現場の状況を定期的に確認することにより、問題の兆候を見逃さないようにすることが重要です。問題の兆候を早い段階で認識することで、問題が表面化するために迅速に対応することが可能となり、プロジェクトが失敗しにくくなるでしょう。
 

計画通りに進まなかった場合のことも考えておく

プロジェクトの進捗は、メンバーのスキルや外部の要因に左右されやすいため、計画が全て予定通りに進むことは稀です。そのため、プロジェクトマネージャーには、計画通りに進まなかった場合のことも考えておくことが求められます。問題が発生した際のシナリオをいくつか用意し、シナリオごとに対応策を考えておきましょう。それにより、プロジェクトの失敗や赤字化を防ぐことができます。
 

クライアントのニーズにも応える

プロジェクトは、「品質」「納期」「予算」だけを守れば良いというものではありません。その3つを守るのはプロジェクトマネジメントの鉄則ですが、クライアントから支持され続けるためには、クライアントのニーズにも応える必要があります。「クライアントに、どのような価値を提供できているか」「クライアントの期待を超えられているか」などを意識しながら、プロジェクトマネジメントを行いましょう。
 

プロジェクトマネジメントの知識集「PMBOK」とは

プロジェクトマネージャー全員がプロジェクトを円滑に管理できるようにするためには、個々のスキルを伸ばすことだけでなく、プロジェクトマネジメントに必要な知識を習得してもらうことも重要です。プロジェクトマネジメントの知識集として知られる「PMBOK」について、紹介します。
 

PMBOKとは、プロジェクトマネジメントに関する知識を体系化したもの

PMBOKとは、「Project Management Body Of Knowledge」の略で、プロジェクトマネジメントに関する知識を体系化したものです。プロジェクトマネジメントの知識をまとめた「知識集」「参考書」とも言えるでしょう。アメリカの非営利団体「PMI」が、プロジェクトマネジメントに関する手法を普及する目的でPMBOKを作成しました。PMBOKでは、プロジェクトを5つのプロセス、10の知識エリアに分類しています。5つのプロセスと10の知識エリアは、以下の通りです。
 
5つのプロセス

①立ち上げ:プロジェクトを集める際、必要な情報を収集し、プロジェクトの管理者や責任の範囲などを定義するプロセス
②計画:プロジェクトの目標達成に向けた業務計画を立案・作成するプロセス
③実行:計画に基づき、「ヒト」や「モノ」を調整し、プロジェクトを実行するプロセス
④監視・コントロール:プロジェクトの進行と並行し、計画と実際とのズレを確認し、必要に応じて軌道修正するプロセス
⑤終結:各プロセスが完了したかを確認し、プロジェクトを正式に終了するプロセス

 
10の知識エリア

①統合マネジメント:以下の9つの知識エリアを統合した知識エリア
②スコープマネジメント:目標達成に必要な成果物やタスクを明確化する知識エリア
③スケジュールマネジメント:納期管理に関する知識エリア
④コストマネジメント:費用管理に関する知識エリア
⑤品質マネジメント:品質管理に関する知識エリア
⑥資源マネジメント:「ヒト」や「モノ」の調達、管理などについての知識エリア
⑦コミュニケーションマネジメント:スポンサーやユーザーといったステークホルダーとの適切なコミュニケーションに関する知識エリア
⑧リスクマネジメント:リスクの洗い出しや対応策の検討などについての知識エリア
⑨調達マネジメント:プロジェクトの遂行に必要なサービス・商品の外部からの取得や購入、管理についての知識エリア
⑩ステークホルダーマネジメント:2012年にコミュニケーションマネジメントから独立した、幅広いステークホルダーとの関係構築や関心の薄い層への働きかけなどについての知識エリア

 
5つのプロセスと10の知識エリアを掛け合わせることで、「●●プロセスで、▲▲マネジメントをする際に必要なことが何か」が明確になります。例として、「立ち上げ」段階の「ステークホルダーマネジメント」ではステークホルダーの特定を、「計画」段階の「資源マネジメント」では人員計画の策定を行います。
 

PMBOKのメリット

PMBOKには、プロジェクトマネジメントに関するさまざまな知識が集約されています。そのため、PMBOKを読むことにより、プロジェクトマネージャーはマネジメント経験の有無に関わらず、プロジェクトマネジメントに関する知識を得ることができます。豊富なデータに基づき集約された知識を実務に取り入れることで、効率的にプロジェクトを管理できるようになるでしょう。
 
また、PMBOKを活用することにより、プロジェクトの各プロセスそのものを管理しやすくなります。目標達成に向け必要なプロセスを1つずつ管理することができるため、「管理精度の向上」や「改善点の洗い出し」なども期待できるでしょう。
 

PMBOKのデメリット・課題

PMBOKでは、プロジェクトマネジメントに必要な知識を体系化・標準化したものです。さまざまな場面で活用することができますが、あくまで知識集であるため、必ずしも全てのシーンに対応しているというわけではありません。標準化の枠組みから外れる、「想定外の出来事が発生し、迅速な対応が必要な場面」や「これまでとは全く異なる、斬新で柔軟な対応が求められる場面」においては、PMBOKの活用は難しいとされています。
 
また、PMBOKでは、経験値の差に関係なくやるべきごとがプロセス・知識エリアごとに細かく標準化されているため、プロジェクトマネージャー一人ひとりの力量の差を考慮しにくいという課題もあります。PMBOKを実践に活かす際は、ガントチャートやWBSといった手法と組み合わせたり、プロジェクトマネージャーの経験値やプロジェクトの実態に応じて改良したりといった工夫をすると良いでしょう。
 

プロジェクトマネジメントにおけるタスク管理手法「WBS」のメリット

プロジェクトマネジメントにおけるタスク管理手法として知られる「WBS」を活用することで、さまざまな効果が期待できます。WBSのメリットについて、紹介します。
 

タスクの洗い出しがしやすく、抜け漏れが防げる

WBSでは、プロジェクトの遂行に必要なタスクを無作為に洗い出すのではなく、順を追って整理しながら一つひとつのタスクに分解していきます。そのため、タスクの洗い出しがしやすく、抜け漏れが防げるというメリットがあります。タスクの抜け漏れが課題となっている場合には、WBSの活用を検討すると良いでしょう。
 

ガントチャートに応用でき、スケジュールの作成・調整がしやすい

WBSに「時間軸」や「担当者」を組み合わせると、ガントチャートが完成します。WBSをガントチャートに応用することにより、スケジュールの作成がしやすくなる効果が期待できます。また、スケジュールを組んだ後もWBSを定期的に確認することにより、「次の段階に進むための業務が滞っていないか」「納期までのスケジュールに無理が生じていないか」などを把握しやすくなります。
 
早い段階で上司やクライアントに相談できるようになるため、スケジュールの調整もしやすくなるでしょう。またWBSを使うことで、プロジェクト全体や各プロセスにかかる工数を見積りやすくなるという効果も期待できます。
 

役割分担を決めやすく、責任の所在が明確になる

WBSを作成することで、「業務Aと業務Bは、2人が同時並行で進めることができる」「業務Cとそれに関連した業務Dは、同じ担当者が望ましい」など、限られたメンバーでどのようにプロジェクトを回していけば良いかを考えることができるようになります。そのため、役割分担を決めやすくなるでしょう。役割分担が決まれば、責任の所在を明確にすることができます。担当者の確定後、WBSに担当者名を追記することで、より管理がしやすくなるでしょう。
 

進捗管理が容易にでき、遅延を防げる

WBSでは、タスクを細分化するため、「予定通り進んでいるのは、どのタスクか」「どのタスクに遅れが生じてしまっているのか」を逐一確認することができます。そのため、進捗管理が容易にできるようになります。また、遅れが発生しているタスクを明確にすることで、「別のタスクの担当者にも、業務にあたってもらう」「他のチームから、期間限定で応援に来てもらう」といったように対応策を講じることができ、遅延を防ぐことができるでしょう。
 

成果物をイメージしやすくなる

プロジェクトを始める際、「新製品・サービスを開発する」「HPをリニューアルする」といった大まかな説明だけでは、メンバーは「どのようなものが出来上がるのか」をイメージするのは難しいでしょう。WBSでは、まずタスクを細分化するため、「今後、どのようなことを行うか」「どういった方向を目指しているか」が明確になり、プロジェクトの成果物をイメージしやすくなります。成果物をイメージすることで、メンバー間の認識のずれが解消され、全員で同じ目標に向かって進んでいくことができるでしょう。
 

プロジェクトマネジメントを学べる本

プロジェクトマネジメントを学びたい方にオススメの本を紹介します。
 

『担当になったら知っておきたい「プロジェクトマネジメント」実践講座』(日本実業出版社)【著】伊藤大輔

プロジェクトマネージャーの育成・教育などを行っている専門会社の代表取締役社長が執筆した1冊。プロジェクトマネジメントに関する基礎知識やツールを、「目標設定」「計画」「実行」の3つの視点で解説しています。プロジェクトマネジメントの入門書としてオススメの本です。
 

『世界一わかりやすいプロジェクトマネジメント 第4版』(総合法令出版)【著】G・マイケル・キャンベル

アマゾンジャパンの「オールタイムベストビジネス書100」にも選出された名著の最新版。プロジェクトマネジメントのフェーズごとの課題リスクやそれを乗り越えるためのノウハウ・ツール、プロジェクト・マネジャーとしてチームを率いるアイデアなどを紹介しています。プロジェクトマネジメントの初心者におすすめの本格的な入門書です。
 

『プロジェクトマネジメントの基本 この1冊ですべてわかる』(日本実業出版社)【著】好川哲人

プロジェクトマネジメントに関する基本的な概念をまとめた1冊。「プロジェクトをどのような体制で実行するのか」「プロジェクトマネージャーには何が求められるのか」などを解説しています。プロジェクトの事例もいくつか紹介されているため、プロジェクトマネジメントについて実践的に学びたい方にオススメです。
 

プロジェクトマネジメントの資格

プロジェクトマネジメントに関する知識は、資格勉強によって習得することもできます。プロジェクトマネジメントの資格を紹介します。
 

P2M

P2Mとは、特定非営利活動法人 日本プロジェクトマネジメント協会(PMAJ)が実施している民間資格試験です。難易度の低い方から順に、「PMC」「PMS」「PMR」「PMA」という4つの資格があります。受験する際には、資格に応じて、講習会の修了や下位資格の取得、実務経験などが必要です。
 

プロジェクトマネージャ試験

プロジェクトマネージャ試験とは、情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験の一環として実施されている、国家資格試験です。プロジェクトマネージャーとしての業務・役割を円滑に遂行するための知識・実践能力が問われます。知名度が比較的高く、平成31年度の応募者数は17600名弱となっています。
 

PMP

PMPとは、PMBOKを作成しているPMIが資格認定を行う国際的な資格です。プロジェクトマネジメントに関する「経験」「教育」「知識」を確かめ、プロフェッショナルとして認定することを目的としています。受験資格が厳しく設定されているため資格取得は容易ではありませんが、取得する価値が高い実践的な資格とされています。
 

プロジェクトマネジメントをサポートするツール

プロジェクトマネジメントをより円滑に行うためには、ツールの活用がオススメです。プロジェクトマネジメントをサポートするツールを紹介します。
 

Asana

Asanaとは、さまざまなアプリやツールとの連携が可能な、プロジェクトマネジメントツールです。「優先度」や「期限」などを設定できる「タスク管理」機能があり、進捗状況の共有も簡単に行うことができます。ソフトバンクやサイバーエージェントといった有名企業でも導入されているようです。
 

Backlog

Backlogとは、株式会社ヌーラボが提供しているプロジェクトマネジメントツールです。「ガントチャート」や課題の状態を直感的に変更できる「カンバンボード」といった便利な機能を搭載しています。ウェブ制作、ソフトウェア開発、大手広告代理店、新聞社などで活用されているようです。
 

Trello

Trelloとは、Trello, Incが提供している無料プロジェクトマネジメントツールです。プロジェクトに関するコメントや添付ファイル、タスクの期限などを「Trelloカード」に追加することにより、全ての情報を一目で確認することができます。Googleやコストコといった有名企業も、このツールを利用しているようです。
 

プロジェクトの目標達成につなげるため、プロジェクトマネジメントを行おう

プロジェクトマネジメントは、プロジェクトを成功に導くために欠かせないものです。プロジェクトマネジメントを行う際は、「プロジェクト全体を俯瞰するスキル」「先を見通すスキル」「相手に合わせたコミュニケーションが取れるスキル」という3つのスキルを意識し、スキルの向上を図りましょう。
 
手法やPMBOK、ツールなどを活用しながらプロジェクトマネジメントを行うことで、プロジェクトの目標達成につなげてみてはいかがでしょうか。

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