ミッション・ビジョン・バリューとは?意味の違いや事例、作り方を紹介

経営を進めていく上で重要な3つの要素である、ミッション・ビジョン・バリュー。企業としての使命やあるべき姿、共通の価値観などを社内外に示すことができるため、多くの企業が取り入れています。
とは言え、最近注目されるようになったことから、「ミッション・ビジョン・バリューをまだ言語化できていない」「作りたいけれど、どのようにしたらいいかわからない」という企業も少なくないでしょう。今回は、ミッション・ビジョン・バリューの意味や企業理念との違い、作り方、注意点などを、他社の事例を交えながら紹介します。
ミッションとは、ビジョンとは、バリューとは
ミッション・ビジョン・バリューとは、企業が経営を行っていく上で重要な3つの要素のことです。2003年に、経営学者ピーター・ドラッカーが著書「Managing in the Next Society」で提唱したことにより、広く知られるようになりました。
ミッション・ビジョン・バリューは一括りにして語られることも多いですが、3つの意味はそれぞれ異なります。ミッション・ビジョン・バリューの意味や、企業理念との違いについて紹介します。
ミッションとは
「ミッション(Mission)」とは、企業が果たすべき日々の使命や企業としての存在意義のこと。「企業として、どういった役割を担う必要があるのか」「どういう目的で、企業として存在しているのか」といった問いへの答えを言語化したものが、ミッションだと理解すると良いでしょう。
経営学者ピーター・ドラッカーは著書「Managing the Non-profit Organization: Practices and Principles」の中で、「組織のリーダーが最初に行う仕事の1つは、自らの組織のミッションを考え抜き、定義すること」としています。この言葉からもその重要性が分かるように、ミッションは企業としての方向性を決める際の指針となるものであり、企業活動の原動力ともされています。
ビジョンとは
「ビジョン(Vision)」とは、企業として将来ありたい姿や実現したい未来のこと。「将来的に、どのような企業になっていたいか」「企業として、どのような未来を実現したいか」といったことを示しているのが、ビジョンです。
ビジョンもミッションも企業にとって目標となるものですが、ミッションは「現在」に目を向けているのに対し、ビジョンは「未来」に目を向けているという特徴があります。「現在」を積み重ねた結果が「未来」であるため、ビジョンはミッションを実現させた後の姿とされています。
バリューとは
「バリュー(Values)」とは、企業としての共通の価値観や、社員一人ひとりが意識する必要のある指針のこと。「企業として価値を提供するために、社員一人ひとりがどういったことを意識していくのか」といった問いへの答えが、バリューです。
社員一人ひとりがバリューに見合った行動をとることにより、企業としてのミッションやビジョンを実現することができます。バリューが曖昧だと、同じ価値観のもとに行動することが難しく、ミッションやビジョンが実現しにくくなるでしょう。そのためバリューは、ミッションやビジョンよりも、分かりやすく具体的な内容である必要があるとされています。なお、バリューは1つに限定する必要がないため、企業によっては複数のバリューを定めているところもあるようです。
企業理念の違い
ミッション・ビジョン・バリューとよく比較される用語に「企業理念」があります。企業理念とは、企業として大切としている価値観や存在意義、あるべき姿などを明文化したものです。
このことから分かるように、企業理念にはミッション・ビジョン・バリューの3つの要素が含まれています。ミッション・ビジョン・バリューよりも、企業理念の方が広義のものだと理解すると良いでしょう。なお、企業によっては、ミッション・ビジョン・バリューのどれかに特化した企業理念や、3つの他に企業理念を定めているところもあるようです。
ミッション、ビジョン、バリューの事例
ミッション・ビジョン・バリューを決めようと思った際、「具体的にどのような内容にすれば良いのか」が知りたい経営者もいるのでしょうか。実際に、各社がどのようなミッション・ビジョン・バリューを掲げているのか、事例を紹介します。
日立グループ
日立製作所を中心とした日立グループの掲げるミッション・ビジョン・バリューは、以下の通りです。
MISSION 企業理念 優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する VALUES 日立創業の精神 和・誠・開拓者精神 VISION 日立グループ・ビジョン 日立は、社会が直面する課題にイノベーションで応えます。優れたチームワークとグローバル市場での豊富な経験によって、活気あふれる世界をめざします
キリンホールディングス株式会社
キリングループの経営戦略を担っているキリンホールディングス株式会社が掲げているミッション・ビジョン・バリューは以下の通りです。
ミッション キリングループは、自然と人を見つめるものづくりで、 「食と健康」の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献します ビジョン 食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる “ONE KIRIN” Values 熱意・誠意・多様性〈Passion. Integrity. Diversity.〉 熱意自由な発想で、進んで新しい価値をお客様・社会に提案することへの我々の熱い意志。会社やブランドに誇りを持ち、目標をやりきる熱い気持ち 誠意ステークホルダーの皆さまのおかげでキリングループは存在しているということへの感謝の気持ち、謙虚な気持ちで確かな価値を提供し、ステークホルダーに貢献するという誠実さ 多様性個々の価値観や視点の違いを認め合い、尊重する気持ち。社内外を問わない建設的な議論により、「違い」が世界を変える力、より良い方法を生み出す力に変わるという信念
株式会社マネーフォワード
個人や法人のお金の課題を解決するサービスを展開している株式会社マネーフォワードの掲げるミッション・ビジョン・バリューは以下の通りです。
MISSION お金を前へ。人生をもっと前へ。 VISION すべての人の、「お金のプラットフォーム」になる。 VALUE User Focus 私たちは、いかなる制約があったとしても、常にユーザーを見つめ続け、本質的な課題を理解し、ユーザーの想像を超えたソリューションを提供します。 Technology Driven 私たちは、テクノロジーこそが世界を大きく変えることができると信じています。 テクノロジーを追求し、それをサービスとして社会へ提供していくことで、イノベーションを起こし続けます。 Fairness 私たちは、ユーザー、社員、株主、社会などのすべてのステークホルダーに対してフェアであること、オープンであることを誓います。
スターバックスコーヒージャパン株式会社
全国でコーヒーショップを展開しているスターバックスコーヒージャパン株式会社では、ミッションとバリューを掲げています。
OUR MISSION 人々の心を豊かで活力あるものにするためにー ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから OUR VALUES 私たちは、パートナー、コーヒー、お客様を中心とし、Valuesを日々体現します。 お互いに心から認め合い、誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくります。 勇気をもって行動し、現状に満足せず、新しい方法を追い求めます。 スターバックスと私たちの成長のために。 誠実に向き合い、威厳と尊敬をもって心を通わせる、その瞬間を大切にします。 一人ひとりが全力を尽くし、最後まで結果に責任を持ちます。 私たちは、人間らしさを大切にしながら、成長し続けます。
株式会社メルカリ
フリマアプリ「メルカリ」を運営している株式会社メルカリでは、ミッションとバリューを掲げています。
ミッション 新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る バリュー Go Bold 大胆にやろう 世の中にインパクトを与えるイノベーションを生み出すため、全員が大胆にチャレンジし、数多くの失敗から学び、実践します。 All for One 全ては成功のために 一人では達成できない大きなミッションを、チームの力を合わせ、全員が最大のパフォーマンスを発揮することで実現します。 Be a Pro プロフェッショナルであれ メンバー全員がその道のプロフェッショナルとしてオーナーシップを持ち、日々の学びを怠らず、成果や実績にコミットします。
株式会社はたらクリエイト
長野県上田市で「リモートチームサービス hatakuri」を展開する株式会社はたらクリエイトが掲げているミッション・ビジョン・バリューは以下の通りです。
MISSION 「はたらく」をクリエイトすることで仕事を楽しむ人を増やす VISION 共に成長するチームをつくろう。 ①共に”その先”を目指します ②期待をちょっと超え続けます ③”人と人”で仕事をします VALUE ①とくかくやってみてから振り返ろう! ②変化を楽しもう! ③disagreeをagreeしよう!
また、はたらクリエイトのビジョン・ミッション・バリューを体現しているスタッフに感謝の気持ちを伝える「はたくりPON!」という取り組みも行っています。
このように、さまざまなミッション・ビジョン・バリューがあります。各社とも「お客様にどういった価値を提供したいか」「そのために、社員一人ひとりがどういった行動を意識すべきか」などを考えた上で、自社にマッチしたミッション・ビジョン・バリューを作っているようです。
ミッション、ビジョン、バリューが必要な理由
多くの企業がミッション・ビジョン・バリューを定めていますが、それらを掲げることに、どのような意義があるのでしょうか。ミッション・ビジョン・バリューが必要な理由について、見ていきましょう。
理由①:企業として進むべき方向性を見定め、長期的に発展していくことができるから
ミッション・ビジョン・バリューは、企業としての使命やあるべき姿、共通の価値観などを言語化したものです。ミッション・ビジョン・バリューがあれば、事業の方向性を定めやすくなり、企業として何か重要な意思を決定する際の基準とすることができるでしょう。
特にミッション・ビジョン・バリューが必要とされるのが、「何か問題が起こったとき」や「経営判断に迷ったとき」「新しい事業に挑戦したいとき」などです。ミッション・ビジョン・バリューがあれば、そうした状況に直面した際でも、企業として進むべき方向性を正しく見定めることができます。
ミッション・ビジョン・バリューに基づき的確で迅速な意思決定を行うことで、時代の波に乗り遅れることなく、企業として長期的に発展していくことができるでしょう。
理由②:価値観や目標を統一することで、自律的に行動できる社員が増えるから
ミッション・ビジョン・バリューには、社員に期待する行動の明確化という「行動規範」としての役割もあります。
ミッション・ビジョン・バリューがあることで、「会社として何を目指しているのか」「そのために、社員一人ひとりはどのような行動をすべきなのか」などを明確にすることができます。それにより、社内で価値観が統一され、社員一人ひとりが同じ目標を持つことができるようになるでしょう。その結果、ミッション・ビジョン・バリューの実現に向け、自律的に行動できる社員が増えることが期待できます。
理由③:ミッション・ビジョン・バリューに共感する人材が集まってくるから
ミッション・ビジョン・バリューを明確にすることは、採用面にも良い影響をもたらします。
ミッション・ビジョン・バリューを広告や会社のHPに掲載することで、「●●することで社会に貢献します」「お客様に感動を提供できる企業になります」「社員一人ひとりが、▲▲を意識して行動します」といった企業の思いを、社外の人にも伝えることができます。それにより、ミッション・ビジョン・バリューに共感する人材が集まってくると期待できるでしょう。
ミッション、ビジョン、バリューの作り方
ミッション・ビジョン・バリューは、どのように作っていけば良いのでしょうか。ミッション・ビジョン・バリューの作り方を、順を追って紹介します。
フロー①:人員の選定
まず、「誰がミッション・ビジョン・バリューを作るのか」を考えます。ミッション・ビジョン・バリューを作る主体となるのは、主に「経営者のみ」「経営者を含む経営陣」「社員みんな」のいずれかです。それぞれのメリット・デメリットは以下の通りです。
「経営者のみ」で作成 | 「経営者を含む経営陣」で作成 | 「社員みんな」で作成 | |
メリット | 経営者の思いを反映しやすい | 経営者の意見だけでなく、さまざまな意見が挙がる | 現場の声を踏まえることができ、社員の共感を得られやすい |
デメリット | 客観的な意見が得られにくいため、独善的なものになる可能性がある | 社員の意見を反映することが難しく、経営陣にとって都合の良いものになりがち | さまざまな意見が出るため、それを1つにまとめるのが難しい |
ミッション・ビジョン・バリューを作ろうと思った経緯や企業としてのフェーズなどによって、適切な人員を選定しましょう。
フロー②:要素の洗い出し
人員の選定が終わったら、ミッション・ビジョン・バリューを作るうえで必要となる要素の洗い出しをします。要素の例としては、「自社のこれまでの歩み」や「企業として大事にしたいこと」「企業として実現させたいこと」「サービスや商品の根底にある価値観」「社員が日々、意識していること」「市場における自社の位置づけ」「企業としての強み」などが挙げられます。
ミッション・ビジョン・バリューの選定に関わるメンバー一人ひとりが、できるだけ多く、思いつくままに自分の意見を出しましょう。
フロー③:要素を集約して文章にまとめる
ミッション・ビジョン・バリューの選定に携わるメンバーの意見が出揃ったら、次に意見を整理します。「商品・サービス」「顧客に提供する価値」「社員としてのあるべき姿」といったように集まった意見をグループ分けし、「どういった共通点があるのか」を探りましょう。その後、共通する要素の集約し、文章にまとめたら、ミッション・ビジョン・バリューの原案が出来上がります。
「自社独自のものになっているか」「社員の共感を得られそうか」など、さまざまな観点から「これで本当に良いのか」を考える作業を繰り返し、誰もが納得できるミッション・ビジョン・バリューを決めましょう。
ここで紹介したミッション・ビジョン・バリューの作り方は、あくまで一例です。選定に関わるメンバーの意見を参考にしながら、自社に合った方法を模索していくと良いでしょう。
ミッション、ビジョン、バリューを作る際の注意点
ミッション・ビジョン・バリューを作る際には、どういったことに注意する必要があるのでしょうか。ミッション・ビジョン・バリューを作る際の注意点を紹介します。
ミッション・ビジョン・バリューの定義を伝える
選定に携わるメンバーの中には、「ミッション・ビジョン・バリューが、どういったものなのか」を知らないメンバーもいるかもしれません。メンバー間に認識のずれがあると、「ミッションを決めるはずが、ビジョンについての意見しかでない」「ミッション・ビジョン・バリューが全て同じになる」といった状況に陥る可能性があります。そうした事態を防ぐため、まずはミッション・ビジョン・バリューの定義について、メンバー一人ひとりに伝えましょう。
一人ひとりの意見を尊重することを心がける
「緊張してしまって、意見を言いづらい」「周囲に遠慮してしまい、本音が言えない」といったメンバーも、中にはいるでしょう。しかし、ミッション・ビジョン・バリューを作る際には、そういったメンバーの意見も大切にする必要があります。「全員から順番に意見を聞く」「誰の意見でも否定せず、最後まで聞く」といったように、一人ひとりの意見を尊重することを心がけましょう。
明確・簡単な言葉で表現する
ミッション・ビジョン・バリューは、社内外の多くの人が目にするものです。そのミッション・ビジョン・バリューが、曖昧だったり、難しい言葉を多用していたりすると、「どういう思いで作ったのか」「企業として何を目指しているか」などが周囲に正しく伝わらない可能性があります。自社のミッション・ビジョン・バリューを社内外に正しく理解してもらうため、明確かつ簡単な言葉で表現するようにしましょう。
作るだけで終わらず、浸透させる
ミッション・ビジョン・バリューは、「作ったら、それで終わり」というものではありません。先ほど紹介したミッション・ビジョン・バリューが必要な3つの理由の1つである「価値観や目標を統一することで、自律的に行動できる社員が増える」については、ミッション・ビジョン・バリューを作っただけでは実現しないからです。
価値観を共有し、自律的に行動できる社員を増やすためには、ミッション・ビジョン・バリューを浸透させる必要があります。「社員がミッション・ビジョン・バリューに触れる機会を増やす」「上司が率先して、ミッション・ビジョン・バリューに合った行動を実践する」といった方法で、社員にミッション・ビジョン・バリューを浸透させましょう。
自社に合ったミッション・ビジョン・バリューを浸透させることで、企業の成長につなげよう
企業としての使命やあるべき姿、共通の価値観などを表現したミッション・ビジョン・バリューは、企業にとっても、社員にとっても、重要なものです。
ミッション・ビジョン・バリューを作る際には、まず選定に携わるメンバーにミッション・ビジョン・バリューの定義について伝えましょう。その上で、要素の洗い出しを行い、明確・簡単な文章にまとめていきます。
自社に合ったミッション・ビジョン・バリューをさまざまな方法で社員に浸透させることで、企業の成長につなげてみてはいかがでしょうか。